制作陣がロケ地として選んだのは、世界自然遺産として名高い屋久島のさらに奥深く、一般の登山道からは完全に隔絶された未公開エリアだった。苔が幾重にも折り重なり、数百年単位で手つかずの生態系が息づくその場所は、立ち入るだけでも厳格な環境保護協定のクリアが求められる難所中の難所である。
「自然を背景として消費するのではなく、森そのものが一つの巨大な人格として俳優たちと対峙する空間が必要だった」。チーフプロデューサーは取材に対してそう語る。現地での撮影には足跡一つ残さないゼロ・インパクトのプロトコルが徹底され、撮影隊は毎日数時間の徒歩移動を強いられたという。苔の一片すら傷つけない極限の緊張感のなかで記録された映像は、単なる美景を超えた、自然の冷徹なまでの生々しさをスクリーンに焼き付けている。