写真集の鮮烈な記憶に目を奪われがちだが、樋口可南子の本領は映画女優としての圧倒的な肉体表現と演技力にある。谷崎潤一郎の名作を映画化した『卍(まんじ)』では、禁断の同性愛と愛憎の泥沼に身を投じる若妻を熱演。清楚な仮面の裏に潜む魔性の情念を、匂い立つような艶やかさで表現し切った。
さらに山田詠美原作の『ベッドタイムアイズ』では、米軍脱走兵の黒人青年と情熱的に惹かれ合うジャズシンガーを体現。生々しい性愛と孤独を一切の妥協なくスクリーンに焼き付け、日本映画の枠を押し広げた。彼女にとって脱ぐことは目的ではなく、役柄の魂を剥き出しにするための必然だったのである。