看板メニューの筆頭といえば、鮮やかなロゼ色に揚げられた「ビフカツ」に他ならない。厳選された牛ヘレ肉に極細の生パン粉を薄く纏わせ、高温の油で短時間でサッと火を通す。サクッとした軽やかな衣の先にあるのは、驚くほど柔らかくジューシーな赤身肉の旨味。これに寄り添うのが、一週間以上かけて香味野菜と牛骨を煮込み、継ぎ足しで深みを増した漆黒のデミグラスソースだ。ビターなコクと心地よい酸味が肉本来の甘みを極限まで引き立てる。
もう一つの伝説的逸品が、常連客から「飲める」と評されるオムライスである。チキンライスの具材は極小に刻まれ、米の一粒一粒にブイヨンとケチャップの旨味が均一にコーティングされている。それを包み込むのは、極限まで薄く焼き上げられた芸術的な卵の層。破れそうで破れない絶妙な火入れにより、スプーンを入れた瞬間に口の中でライスと卵が一体となってほどけていく。重たさを一切感じさせない軽やかな口当たりは、まさに唯一無二の職人芸だ。