1918年、広島の造り酒屋の三男として生まれた青年は、本物のスコッチウイスキー造りを学ぶため単身スコットランドのグラスゴー大学へと留学した。当時、東洋人が蒸留技術の本質を学ぶことなど前例のない挑戦だった。実習先でノートに細かく書き留められた製造工程、温度管理、酵母の選定。その几帳面な記録は、後に日本ウイスキーの設計図となる門外不出の遺産となった。
だが、彼が得た最大の宝は技術だけではなかった。下宿先で出会ったジェシー・ロベルタ・カウン(通称:竹鶴リタ)との出会いが、彼の運命を決定づける。異国人同士の婚姻に親族中から激しい反対を受けながらも、二人は愛を貫き通した。言葉も文化も異なる日本へと渡り、夫の夢を誰よりも信じて支え続けたリタの献身は、単なる美談では片付けられないほどの覚悟に満ちていた。