1940年、アニメーション作家のウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラが手掛けた記念すべき第1作『上には上がある(原題:Puss Gets the Boot)』において、2匹はまだ「トムとジェリー」ではありませんでした。この時点での猫の名前は「ジャスパー(Jasper)」、ネズミは「ジンクス(Jinx)」と呼ばれていた記録がMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)のスタジオ資料に残されています。
第1作がアカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされる大ヒットを記録したことを受け、スタジオは本格的なシリーズ化を決定。その際、より親しみやすくキャッチーなコンビ名を社内公募しました。そこでアニメーターのジョン・カー(John Carr)が提案した「トムとジェリー」が採用され、現在の名称が確立されました。
「トムとジェリー」という言葉自体のルーツは、19世紀初頭のイギリスにまで遡ります。作家ピアース・イーガンが1821年に発表したロンドンの世相を描く人気小説『Life in London』の主人公コンビ(トムとジェリー)が大流行し、そこから「騒動を起こす悪ガキ2人組」を指すスラングとして定着しました。さらに、エッグノッグにラム酒やブランデーを加えた伝統的な冬のカクテル「トム・アンド・ジェリー」としても広く親しまれていたため、当時のアメリカの観客にとって親近感とユーモアを即座に想起させるネーミングだったのです。