シャルキュトリーのルーツを辿ると、古代ローマ時代から中世ヨーロッパへと行き着きます。当時は冷蔵設備など存在せず、冬を迎える晩秋に家畜の豚を屠殺し、厳しい冬を越すための「保存食の歴史」そのものが技術の母体となりました。
フランスには古くから「豚には捨てるところがない(Tout est bon dans le cochon)」という有名なことわざがあります。赤身肉は塩漬けにして生ハムへ、脂身は煮溶かしてリエットへ、内臓や血はソーセージ(ブーダン・ノワールなど)へ、そして頭部の肉や耳は煮こごり(フロマージュ・ド・テット)へと姿を変えました。命を屠った以上、一切の無駄を出さずに長期間美味しく食べ繋ぐ知恵が、数世紀をかけて洗練された食文化へと昇華したのです。
15世紀のフランスではシャルキュティエの同業者組合(ギルド)が結成され、豚肉の調理加工と販売を独占する特権が認められました。2026年現在、街角のビストロやシャルキュトリー専門店に並ぶメニューの数々は、かつての農民と職人たちが飢餓を生き延び、食材への敬意を払い続けてきた歴史の結晶と言えます。