現場で苦悩する当事者の声に耳を傾けると、五月病の様相は以前に比べて格段に複雑化・深刻化しています。日本産業精神保健学会や厚生労働省が警鐘を鳴らす新入社員・新大学生の五月病実態の調査データによると、入社・入学後1か月以内に「強い不安や無気力を感じた」と答える割合は約45〜60%に達しています。
大手IT企業に入社した20代男性社員の手記には、次のような痛切な告白が綴られています。
「4月の研修中は誰よりも早く出社し、課題も完璧にこなしていました。同期や上司からも『頼もしい』と評価され、自分でもうまく馴染めていると思っていたんです。ところがGWで実家に帰省し、最終日の夜に東京のアパートに戻った瞬間、動悸が止まらなくなりました。翌朝スーツを着ようとすると手が震え、ネクタイを締めることができませんでした。ベッドから起き上がれず、情けなさと恐怖で号泣しました」
この告白に象徴されるように、五月病の標的となるのは「不真面目な人」ではありません。むしろ「周囲の期待に応えようと全力で背伸びをした真面目で責任感の強い人」ほど、ギャップに打ちのめされる傾向が顕著です。
また、2026年現在の労働環境特有の要因も見逃せません。出社とテレワークが混在するハイブリッドワークの普及によって、同僚との雑談や偶発的な相談の機会が減少し、「周囲が自分をどう評価しているのか見えない」という孤立感を深めるケースが急増しています。大学現場でも同様に、オンラインシラバスや自主受講の柔軟性の裏で、リアルな友人関係を築けずに「キャンパスに居場所がない」と感じる新入生の相談件数が、学生相談室において高止まりを続けています。