大洋を漁場とする遠洋延縄漁船の航海は、一度出港すれば300日から400日以上に及ぶことも珍しくありません。太平洋、インド洋、大西洋の赤道直下から冷たい暴風圏まで、乗組員たちは陸地から遠く離れた洋上で極限の作業に挑み続けます。
当時の特番ドキュメンタリーや船員の手記で明かされた『海上で時計を見るのが怖くなる』という生々しい告白は、作業スケジュールの過酷さを象徴しています。延縄漁の一日は、深夜から早朝にかけて行われる「投縄(とうなわ)」から始まります。時速20km前後で走る船尾から、数百メートルの間隔で幹縄を繰り出し、餌を付けた枝縄を数秒間隔で正確に海中へ投げ入れる作業を約5時間連続で行います。
数時間の待機(縄を海中に馴染ませて魚が食いつくのを待つ時間)を挟んだ後、午後から始まるのが「揚縄(あげなわ)」です。ウインチで巻き上げられる幹縄から枝縄を手繰り寄せ、かかったマグロを船上へ引き揚げます。この揚縄作業は、縄が切れたり絡まったりするトラブルがなければ10時間から15時間連続で続き、深夜に及ぶことも日常茶飯事です。
釣り上げられたマグロは、即座にエラと内臓を取り除かれ、神経締めを施された後、船内にあるマイナス60度の超低温急速冷凍室へと運び込まれます。SNSや漁業関係者のコミュニティでは「揺れる甲板での連続作業と極寒の冷凍庫作業の往復は、体力の限界を超える」という声が今も絶えません。近年の日本の遠洋延縄漁船では、船員の高齢化に伴いインドネシアを中心とする外国人技能実習生や船員が主力となっており、自動投縄機や枝縄巻き取り機の自動化など、労働負荷を軽減する技術革新が現場で急ピッチに進められています。