この物語を一躍世界中に定着させた立役者が、イギリスの著述家ポール・スローン(Paul Sloane)です。彼が1990年代初頭に発表した著作『Lateral Thinking Puzzlers』などの問題集によって、この特異なゲーム形式は世界中のパズル愛好家へ爆発的に浸透しました。
この遊びは、マルタの心理学者エドワード・デボノが提唱した「水平思考(Lateral Thinking)」をゲーム化したものです。垂直思考(ロジカルシンキング)が前提条件を深掘りして正解を積み上げるのに対し、水平思考は既存の枠組みや前提そのものを疑い、横方向に視点をずらす発想法を指します。別名として「シチュエーションパズル」や、質問への回答形式から「イエスノーパズル」とも呼ばれます。
ゲームの進行は極めてシンプルながら、緻密なコミュニケーションを必要とします。
まず出題者が謎めいた物語(問題文)を提示します。回答者は物語の隠された背景を突き止めるため、出題者に質問を投げかけます。出題者が回答できるのは、基本的に「はい」「いいえ」「関係ありません」の3種類のみという厳格な制約が課されます。回答者は「男は病気でしたか?」「そのレストランは初めて訪れましたか?」といった問いを重ね、状況の範囲を狭めていきます。
質問者は「男は味が不満だったのか?」「金銭的なトラブルか?」といった思い込みを排除し、過去の出来事や心理的背景に視野を広げる必要があります。限られた情報から多角的な仮説を構築し、検証を繰り返すプロセスそのものが、ウミガメのスープのルールとやり方における最大の醍醐味といえます。