行政上の合理的な理由があるにもかかわらず、なぜ「栄町0番地」はホラーや都市伝説の格好の素材となってしまったのでしょうか。その背景には、インターネット文化特有の情報拡散メカニズムがあります。
発端となったのは、2000年代初頭の匿名掲示板や初期のブログカルチャーでした。「存在しないはずの0番地」「カーナビで検索すると目的地が表示されない」といった体験談が書き込まれ、そこに「栄町」という全国どこにでもある地名が組み合わさったことで、誰もが「自分の街の近くにあるかもしれない」というリアリティを感じてしまったのです。
さらに、地図アプリやストリートビューが普及した2010年代以降、ネットユーザーによる「探索実況」が過熱。境界未定地や公図の切れ目を面白おかしく解釈したコンテンツが動画サイトなどで拡散され、あたかも禁足地であるかのようなイメージが定着していきました。人々の知的好奇心と「奇妙な住所への恐怖心」が合致した結果、ごく普通のインフラ用地が都市伝説の舞台へと仕立て上げられたと言えます。