権力による事実の歪曲を目の当たりにするとき、ジャーナリズムが想起すべき痛烈な記憶がある。かつて戦時下において言論機関を震撼させた歴史的な治安維持法違反事件。その渦中に置かれた細川嘉六の論文や、編集者として投獄された木村亨をはじめとする言論人たちの過酷な運命だ。
拷問と自白強要によって無実の罪が捏造されたあの暗黒時代から、私たちは何を学んだのか。調査報道・ジャーナリズムの使命とは、権力が敷設した「公式見解」というレールを疑い、抗うことにある。過去の亡霊は消え去っていない。装いを変え、現代の洗練された法執行の陰に巧妙に潜伏しているのだ。