1970年代半ば、任天堂に入社した岡田は、稀代のアイデアマンとして名高い横井軍平の直属となった。電卓用液晶の余剰から着想を得た『ゲーム&ウオッチ』の開発において、横井の直感的なアイデアを動く回路へと具現化したのが岡田である。だが、二人の関係は単なる師弟や二人三脚という美談だけでは括れない。
横井が提唱した「枯れた技術の水平思考」――すでに普及して安価になった技術を別の用途に転用する哲学に対し、岡田は常に技術者としての厳密さと進化の必要性をぶつけた。単に安ければ良いわけではない。プレイヤーが快適に遊べるレスポンスと耐久性、そして将来性。二人の激しい議論と試行錯誤の摩擦熱こそが、黎明期の任天堂ハードを唯一無二の製品へと鍛え上げた。