彼の作品がこれほど世界中で愛される背景には、優れた翻訳者たちの存在がある。フィリップ・ガブリエルやジェイ・ルービンをはじめとする一流の翻訳家たちが、独特の「村上節」とも言えるリズムやトーンを完璧に異言語へ移植してきた。
日本語特有のあいまいさや情感を保ちつつ、英語をはじめとする数十種類の言語に変換された物語は、それぞれの文化圏で自国の文学のように読まれている。村上自身が翻訳家としてレイモンド・カーヴァーやF・スコット・フィッツジェラルドの作品を日本語に移植してきた経験が、自らの文章の「世界性」を研ぎ澄ます助けとなったことは間違いない。