チョウトンボのライフサイクルを知ると、その繊細な生命の営みが見えてきます。メスは水面を羽で叩くようにして水草の周囲に産卵し、孵化した幼虫(ヤゴ)は池の底で生活を始めます。
チョウトンボのヤゴは脚が非常に長く、泥や水草の枯葉に隠れるカモフラージュ能力に長けています。小型のミジンコやアカムシ、オタマジャクシなどを捕食しながら越冬し、翌年の初夏に水草の茎を登って羽化します。成虫になってからの寿命はおよそ1〜2ヶ月程度と短く、その短い期間に繁殖活動を全うします。
その美しさから「自宅で飼育したい」と考える人もいますが、成虫の飼育は極めて困難です。広大な縄張りを飛び回り、空中で生きた獲物を捕食する生態を持つため、虫かご内では翅を激しく打ち付けて構造色を失い、数日で衰弱死してしまいます。観察は自然の中で行うのが鉄則です。
また、近年は湿地帯の埋め立てや外来魚(ブラックバスやブルーギル)によるヤゴの捕食、農薬の影響によって生息適地が減少しています。全国一律の絶滅危惧種ではないものの、複数の都道府県でレッドデータブック(絶滅危惧II類や準絶滅危惧種など)に指定されており、その希少価値と生息環境の保全意識は年々高まっています。