意識が戻った後も、若嶋津六夫氏を待ち受けていたのは想像を絶する過酷な闘病生活でした。言葉を発することも、自力で身体を動かすこともままならない状態からのスタートとなり、一時は生きる意欲を失いかけるほどの苦しみを味わったといいます。
その窮地を救ったのが、妻・高田みづえさんの無償の愛と献身でした。高田さんは事故直後から病院に泊まり込み、夫の耳元でヒット曲『硝子坂』や『そんなヒロシに騙されて』を歌いかけ、現役時代の武勇伝を語り続けることで意識の覚醒を促しました。
病状が安定してからの病気リハビリ生活においても、高田さんは毎日欠かさず付き添い、発声練習や筋力トレーニングを二人三脚で支えました。夫が弱音を吐きそうになると「焦らなくていいよ、一歩ずつ進もう」と励まし続け、持ち前の明るさで病室を照らし続けたのです。この献身的な看護と本人の不屈の精神力が合わさり、医療関係者も驚く奇跡的な運動機能の回復を成し遂げました。