恋愛の舞台は決してドラマチックな悲劇ばかりではない。日常のささやかな食卓や散歩道から芽生える恋情を巧みにすくい上げたのが、有川ひろの『植物図鑑』だ。行き倒れていた青年との奇妙な同居生活から始まる物語は、道端の野草を料理して食べる丁寧な暮らしの描写とともに、読者の心を解きほぐしていく。
こうした日常密着型の作品は、近年Netflixをはじめとする配信プラットフォームでのドラマ化や映画化をきっかけに再び注目を集めている。出版業界においても、映像化による相乗効果は計り知れない。画面越しに伝わる俳優の演技に胸を打たれたファンが、登場人物たちの細やかな心理描写を求めて原作の文庫本を手に取る好循環が生まれている。