棒高跳びの歴史を語る上で避けて通れないのが、通算35回もの世界記録を打ち立てた「鳥人」セルゲイ・ブブカの存在だ。ブブカは圧倒的な助走スピードと強靭な体幹を武器に、硬いポールを強引にしならせるダイナミックな技術体系を確立した。そして現在、その伝説を過去のものに塗り替え続けているのが、スウェーデンの怪物アルマンド・デュプランティスである。
スポーツバイオメカニクスによる最新の動作解析は、デュプランティスの異次元さを冷徹な数値で証明している。100メートルを10秒台前半で駆け抜けるトップスプリンター並みの助走から、踏み切り時にポールへ流し込む運動エネルギーの総量は従来のジャンパーを圧倒する。彼はしなやかで軽量なハイブリッドポールを用い、身体が逆立ちした頂点でのエネルギーリターンを極限まで引き出している。肉体の進化と力学の計算が融合した結果が、現在の世界記録ラッシュなのだ。