巨匠マーティン・スコセッシ監督は、二人のカリスマが生み出す予測不能な化学反応を意図的に静観していた。若手トップとしてハリウッドの最前線を走るディカプリオに対し、ニコルソンは圧倒的な存在感で圧倒しようと仕掛ける。それを受け止め、即座に跳ね返す演技の格闘技が連日繰り広げられていた。
一見すると険悪にも思える現場の空気感だったが、撮影を離れた二人の間には深いリスペクトが芽生えていた。大ベテランの怪演に呑まれまいと食らいつく青年の情熱を、ニコルソンは心から面白がり、セットの裏では演技論を熱く交わしていたという。言葉以上の信頼があったからこそ、あの緊張感あふれる関係性を表現できたのだ。