個展会場の最奥、ひときわ強いスポットライトを浴びる大型の抽象画がある。激しくのたうち回るような深紅の絵の具と、それを冷酷に押しつぶそうとする群青のコントラスト。この色彩設計こそが、かつての泥沼劇そのものではないかと美術関係者の間で囁かれている。
「これは単なる抽象画ではない。引き裂かれた感情のドキュメンタリーだ」。会場を訪れたあるアートディレクターはそう漏らす。当時の関係者たちが抱えたであろう、怒り、悲しみ、そして執着。それらが14年の時を経て、キャンバスの上でようやく成仏したかのような、不思議な迫力がそこには漂っている。