鶏肉、特にむね肉を加熱した際にパサつきを感じる最大の要因は、「筋線維の熱収縮に伴う肉汁(ドリップ)の流出」にあります。鶏肉の筋肉は細長い筋線維が束になって走っており、加熱温度が65℃を超えるとタンパク質が急激に収縮して内部の水分を外へと押し出してしまいます。
ここで重要になるのが、鶏むね肉を柔らかくする切り方の理由です。筋線維と平行に包丁を入れてしまうと、長い線維がそのまま残り、加熱時に肉全体が強く縮んで硬い噛みごたえになってしまいます。一方で、繊維を断ち切るように垂直に刃を入れると、線維の収縮力が分散され、隙間に肉汁が留まりやすくなります。さらに断面の表面積が広がるため、下味の浸透スピードが約1.5倍から2倍に向上し、短時間の漬け込みでも保水性の高いしっとりとした仕上がりを実現できます。