岩城滉一さんにとって、主演の田中邦衛さんは役者としても人生の先輩としてもかけがえのない師匠のような存在でした。五郎と草太の関係そのままに、ロケ現場での二人は本当の親子や兄弟のように濃密な時間を過ごしていました。
演技論を語るのではなく、ただそこに五郎として立ち尽くす田中邦衛さんの背中から、岩城さんは「演じることの神髄」を吸収していきました。撮影の合間、雪の中でかじかむ手を温め合いながら交わした雑談や、食事を共にした日々は、岩城さんの一生の財産になったといいます。
田中邦衛さんが旅立たれた際も、岩城さんは言葉少なに深い哀悼の意を示し、富良野で共に生きた日々の尊さを噛み締めていました。草太兄ちゃんが五郎に向ける真っ直ぐな尊敬の眼差しは、岩城滉一という一人の男が田中邦衛という名優に捧げた本物の敬意そのものだったのです。