1980年代半ば、日本中を駆け巡ったニュースはあまりにもセンセーショナルだった。大相撲の最前線で大関として躍動していた若島津六夫と、数々のヒット曲を飛ばしていた歌姫・高田みづえ。角界のスターと芸能界のトップアイドルによる熱愛、そして結婚の報は、日本中を祝福の渦に巻き込んだ。
高田みづえといえば、1977年のデビュー曲『硝子坂』の大ヒットを皮切りに、切ない歌詞と圧倒的な歌唱力で一気にブレイク。NHKの看板番組である『NHK紅白歌合戦』にも毎年のように出場し、お茶の間に愛される存在だった。しかし、1985年の結婚と同時に、惜しまれつつも一切の芸能活動から身を引く決断を下す。
華やかなスポットライトに別れを告げ、彼女が踏み出したのは「おかみさん」という過酷な裏方の道だった。夫を支え、弟子たちの食事や生活の世話を焼き、部屋の切り盛りを一手に引き受ける。人気歌手だった過去をいっさい誇ることなく、一途に角界へと尽くす姿は、周囲の親方衆や相撲ファンからも絶大な信頼を獲得していった。