中村倫也という稀代の表現者を語る上で欠かせないのが、作品ごとに見せる劇的な変貌だ。山あいの町で起きる不可解な事件を描いた『ハヤブサ消防団』では、ミステリアスな事件に巻き込まれていくミステリ作家役を熱演。静かな狂気と知性を漂わせ、観る者を深く引き込んだ。
一方で、大ヒット作『凪のお暇』で見せた”メンヘラ製造機”と呼ばれるイベントオーガナイザー役の危険な色香と優しさは、多くの視聴者を虜にした。まったく異なるジャンルの作品であっても、彼が画面に現れるだけで物語の解像度が跳ね上がる。日本のテレビドラマ史に刻まれる数々の傑作は、彼の存在によってより鮮やかな色彩を得てきたのだ。