一方、プリンストン高等研究所やマサチューセッツ工科大学で異彩を放った天才ジョン・ナッシュは、非協力ゲームの均衡理論によって経済学に革命をもたらした。彼の導き出した「ナッシュ均衡」は、冷戦下の核抑止力から現代のサイバーセキュリティ、オークション理論に至るまで幅広く応用されている。
長年にわたり統合失調症の深い闇と戦い続けたナッシュの足跡は、知性と精神の限界をめぐる人間のドラマそのものだ。周囲の支えと自らの精神的格闘を経てノーベル経済学賞を受賞した彼の生涯は、学問がいかに人間の生命と不可分であるかを力強く示している。