スクリーンの中でも、バーとラウンジは独特の存在感を放ち、作品の空気を決定づけてきた。例えば映画『ロスト・イン・トランスレーション』では、東京のハイエンドなホテルラウンジが描かれ、異国で浮遊する主人公たちの孤独と交歓の舞台として鮮烈な印象を残した。
対して映画『007/カジノ・ロワイヤル』でジェームズ・ボンドが「ヴェスパー・マティーニ」を注文するシーンは、バーカウンターという緊張感ある舞台だからこそ映える名場面だ。ステアではなくシェイクで指定するボンドのこだわりは、バーという空間が男のアイデンティティや美学を体現する場所であることを雄弁に物語っている。