なぜ卵の期限にこれほど神経質になる必要があるのか。その最大の理由は、食中毒を引き起こす「サルモネラ属菌」の存在にある。食品衛生学の観点から見ると、卵の内部や殻にはごく稀に微量の菌が存在する可能性がある。
食品安全委員会や現場の食品衛生管理者が警鐘を鳴らすのは、保管温度の上昇や時間の経過によって、卵黄を包む黄身膜が弱まる現象だ。膜が破れると、白身に含まれる栄養分と交ざり合い、サルモネラ属菌が爆発的に増殖し始める。これが食中毒を引き起こす直接のメカニズムである。
菌の増殖を防ぎ、リスクをゼロに近づけるための決定打が熱処理だ。サルモネラ属菌は熱に弱く、中心温度70℃で1分間以上、または65℃で5分間以上の加熱調理を行えば死滅する。半熟の温泉卵やとろとろのオムレツではなく、黄身も白身も完全に固まるまで火を通すことが、期限切れ卵を安全に食すための鉄則と言える。