高級料亭のフランス料理やミシュラン星付きの高級寿司ではない。彼がテーマに選ぶのは、立ち食いそば、魚肉ソーセージ、アジの開き、あるいはスーパーの惣菜コーナーに並ぶ焼き鳥だ。どこにでもある食材を前に、筆者はまるで探偵のように考察を重ね、時には戦場に臨む兵士のように真真剣に向き合う。
例えば、シュークリームを食べるとき、中のカスタードクリームが反対側から溢れ出さないようにどうアプローチするか。そうした日常の「ちょっとした困りごと」や「密かなこだわり」を徹底的に観察する姿勢が、読者に強烈な共感を生む。食という最も身近な体験を、人間心理の洞察へと昇華させる手腕こそ、彼が唯一無二とされる理由だ。