学校の怪談の定番でありながら、『地獄先生ぬ〜べ〜』に登場した人体模型の恐怖演出は群を抜いていました。多くの読者や視聴者が「理科室の前を通るのが怖くなった」と振り返る最大の理由は、日常空間である学校が一変して逃げ場のない閉鎖空間になる絶望感と、怪異の圧倒的な生理的嫌悪感にあります。
作中に登場する人体模型は、右半身が皮膚に覆われ、左半身は筋組織や内臓がむき出しという典型的な理科用教材の姿をしています。しかし、ひとたび怪異と化すと、無機質なプラスチックの瞳を見開き、カタカタと乾いた関節音を響かせながら時速数十キロとも思える猛スピードで標的を追尾します。
さらに恐怖を倍増させたのが、「完全な人間になるために生きた人間の皮膚や内臓を剥ぎ取って奪おうとする」という生々しい行動原理です。単に驚かせるだけでなく、小学生たちの柔らかい肉体に直接危害を加えるという直接的な脅威が、幼心に消えないトラウマを刻み込みました。