日常の起床から歯磨き、歩き方、スマートフォンのチェックに至るまで、人間は1日に約3万5000回の決断を下しています。その膨大な情報処理をすべて顕在意識で行おうとすれば、脳は瞬く間にエネルギー切れを起こしてしまいます。そこで脳は、エネルギー消費を抑えるために大脳基底核を中心とした自動化システム(オートパイロット)を構築し、ルーティン処理を無意識の領域に委ねています。
理性を司る前頭前野のエネルギーである「ウィルパワー(意志力)」は、有限なリソースです。仕事や家事でストレスを感じたり疲労が蓄積したりすると、意志の力は急速に摩耗します。その結果、脳は最も省エネで慣れ親しんだ「過去の思考パターンや癖」へと強制的に回帰します。どれほど強い意気込みがあっても、無意識に刷り込まれた設定が過去のままであれば、元の自分に引き戻されるのは脳の生存本能として極めて自然な反応です。
現状を劇的に変えるために必要なのは、意志の力を振り絞ることではなく、脳科学ルーティン習慣化の仕組みを取り入れて、無意識が自動的に望ましい選択を選ぶように設定を上書きすることにあります。