舞台裏の控室に現れた彼は、ステージ上の圧倒的なオーラとは対照的な、柔らかく知的でフラットな微笑みを浮かべていた。東京大学大学院で音響信号処理や情報科学を修めた異色の経歴を持つ彼は、独自の論理的思考と感性を高度に融合させている。「僕にとってピアノは、数学的であり、同時に極めて感情的な小宇宙なんです」と彼は静かに語り始める。
現在敢行中の世界ツアーでは、北米から欧州、アジアの主要都市を巡り、連日ソールドアウトを記録。伝統的なコンサートホールの静けさと、熱狂的なフェスのような熱気が同居する独自の空間を作り出している。ツアーの過密スケジュールの中でも、「各地の空気感や音響特性によって、毎晩まったく違う響きが生まれるのが面白い」と語る瞳には、好奇心の炎が宿る。東大で学んだ音響科学の視点は、響きの空間設計にも活かされており、客席の隅々にまで緻密に計算された美音が届く仕組みを生み出している。