この静かな日常の根底を支えているのが、長年連れ添った妻をはじめとする家族の献身的な存在だ。認知症介護の現場は、当事者のみならず支える家族にとっても予期せぬ葛藤や忍耐を伴う。しかし蛭子家においては、病気という現実を静かに受け入れつつ、彼個人の尊厳とペースを最優先にする支援体制が自然体で築かれている。
自宅内のバリアフリー化や転倒防止策といった環境面での配慮はもちろんのこと、感情の波に寄り添う細やかなコミュニケーションが積み重ねられている。介護の専門家は「認知症のケアにおいて最も重要なのは、本人の自尊心を傷つけず、絶対的な安心感を与えること」と強調するが、ご家族が実践する寄り添い方はまさにその理想的な姿を体現していると言えるだろう。