上野毛駅を特別な場所に仕切っている最大の要素は、その唯一無二の駅舎建築にある。日本を代表する建築家・安藤忠雄氏がデザインを手掛けた現在の駅舎は、中央を貫く環状八号線(環八)の上空を巨大なオープンシェルター(大屋根)で跨ぐダイナミックな構造だ。直線と曲面が組み合わさった打ち放しコンクリートとガラスのコントラストは、単なる交通インフラの枠を超え、街のランドマークとして機能している。
改札口に立つと、天井の開口部から注ぐ吹き抜けの自然光が、時間帯によって構内の表情を変えていくのがわかる。朝の通勤時間帯にはシャープな光線が乗降客の足元を照らし、夕暮れ時には温かみのある茜色がコンコースを包み込む。毎日使う「駅」という日常の空間に、これほど贅沢な建築美が溶け込んでいる例は都内でも珍しい。通りを行き交う車流のダイナミズムと、駅構内の落ち着いた静寂。対極にあるふたつの要素が見事に調和した空間体験は、現地を訪れた者を一瞬で魅了する。