カウンター席に腰を下ろし、目の前を流れるメニュー札を見つめる。アジ、タチウオ、金目鯛。ここまでは小田原の優秀な回転寿司だ。しかし次の瞬間、目に入ってくる文字に誰もが二度見する。「牛レバーのレアステーキ」「イベリコ豚の生ハム」「エストラゴン香るエスカルゴ」。
注文が入るたび、厨房からは香ばしいガーリックとバターの香味が立ち上る。魚を捌く包丁の音と、フレンチのソースを煮詰めるスキレットの音が完璧なハーモニーを奏でるのだ。シャリの上に鎮座するネタの鮮度は言うまでもない。早朝の小田原港でセリ落とされた地魚は身が締まり、噛むほどに濃密な旨味が広がる。その直後に口へ運ぶフォアグラのソテーが、驚くほど違和感なく胃袋へ収まっていく。