この理論を極限まで洗練させたのが、グローバルEC巨頭のAmazonや大型チェーンストアをはじめとする現代の小売業だ。彼らは一部の定番商品を極端な安値で提供する「ロスリーダー戦略」を徹底的に駆使している。電子書籍端末やスマートスピーカーを製造コストギリギリ、あるいは実質的な赤字価格で市場に投入し、その後のデジタルコンテンツ購入や有料会員の継続課金によって巨額の利益を回収する生態系を構築した。
リアルのスーパーマーケットが日替わりの卵や牛乳を赤字覚悟の目玉商品としてチラシに載せるのも、まったく同じカラクリだ。来店客がカゴに放り込む惣菜や日用品の粗利によって、目玉商品の赤字は一瞬で相殺される。単品の収支に固執せず、店舗全体、あるいはプラットフォーム全体での生涯顧客価値(LTV)を最大化する仕掛けが張り巡らされている。