役所で取得できる明治期の除籍謄本(いわゆる壬申戸籍以降の記録)だけでは、通常1800年代初頭から幕末付近で調査の限界に突き当たる。いわゆる「明治の壁」を突破し、200〜300年前の先祖へ到達するための鍵こそが江戸時代の墓石を活用した家系図・ルーツ調査である。
しかし、風化や苔によって肉眼では文字が潰れて読めないケースが少なくない。そこで専門家も実践する決定的な調査技術が2つある。
1つ目は、江戸時代の墓石における拓本での文字の調べ方だ。墓石表面を水で湿らせて画仙紙を密着させ、専用のタンポに墨をつけて軽く叩く「湿拓(しったく)」の手法を用いれば、肉眼では捉えられない微細な彫り込みの凹凸が紙上にくっきりと浮かび上がる。石材を傷めないよう配慮が必要だが、極めて精度の高い証拠保全となる。
2つ目は、夜間に強力なLEDライトを墓石の真横から極端な角度で当てる「斜光撮影(しゃこうさつえい)」だ。深い影を作ることで、平坦に見えていた石面の文字が明瞭に可視化される。判読した戒名と没年月日を手がかりに菩提寺の「過去帳」と照合すれば、家系図の世代を江戸時代初期まで一気に遡航させることが可能となる。