なぜ、発疹が消えた後にもかかわらず激痛が残り続けるのでしょうか。そこには、帯状疱疹放置の危険性を決定づけるウイルスと神経の構造的な破壊プロセスが存在します。
帯状疱疹の原因は、子どもの頃にかかった水ぼうそうと同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」です。水ぼうそうが治った後も、このウイルスは体から完全に消え去るわけではなく、脊髄近くの「神経節」と呼ばれる神経の根元に生涯にわたって潜伏し続けます。加齢や過労、過度なストレスによって身体の免疫力が低下すると、眠っていたウイルスが再び猛烈な勢いで増殖を開始します。
増殖したウイルスは、神経線維の中を通って皮膚へと向かいます。この過程で神経組織そのものを激しく攻撃し、炎症を起こしながら破壊していきます。皮膚の表面に現れるピリピリした痛みと水ぶくれは、いわば「神経の中で起きた火災が皮膚の表面まで燃え広がってきた状態」に過ぎません。
抗ウイルス薬を投与せずに放置した場合、ウイルスが神経線維を徹底的に焼き尽くします。その結果、皮膚の炎症が鎮火して自然治癒にかかる期間(約3〜4週間)が経過した後も、傷ついた神経が異常な興奮シグナルを脳へ送り続けることになります。これが、最難治性の慢性疼痛として知られる帯状疱疹後神経痛(PHN)の正体です。一度完全に変性・破壊されてしまった神経を元の正常な状態へ再生させることは、現代医学をもってしても極めて困難です。