インターネット上で「砥石がなくても包丁が切れる」と拡散される包丁研ぎにおける茶碗の底を活用した代用裏技ですが、その本質的な効果と限界を理解しておく必要があります。陶磁器の底にある釉薬がかかっていないリング状のザラつき(ハマ)は、アルミナ成分を含んでおり約#800〜#1000程度の砥石に近い硬度を持っています。
直前の刃先についた歪みを取り除く簡易ストロッピング効果はあるものの、接地面積が狭すぎるため、研削面が波打ち刃線が変形する構造的リスクを孕んでいます。日常的な刃の健康を保つためには、あくまで出先や非常時の応急処置として留めるのが賢明です。
また、砥石を使い続けるうちに中央部分が凹んで湾曲していく現象も見落とされがちです。凹んだ砥石でいくら角度を意識して研いでも、刃先が丸く鈍角になってしまいます。定期的に「面直し砥石(修正用ダイヤモンドプレートや専用の溝入り面直し砥石)」を用いて、砥石の面直しを定期的に行うことが、包丁を歪ませずに研ぎ上げるための隠れた最重要ファクターです。