電気の安全性やインフラ技術に関して、ネット上ではいくつかの誤解が見受けられます。代表的な2つのポイントを検証します。
1点目は感電の危険性の違いに関する誤解です。「直流と交流ではどちらが危険か」という議論において、一般的な家庭環境下(100V前後)では交流の方が人体に対する危険度が高いとされています。
交流は周波数(50Hz/60Hz)を持っているため、触れた際に筋肉が周期的な電気刺激によって強直(硬直)し、掴んだ電線を自力で離せなくなる「不離限界(Can't Let Go)」状態に陥りやすい特性があります。さらに、心臓の鼓動リズムを乱し、致命的な「心室細動」を誘発しやすい危険性があります。対して直流は、筋肉を強く収縮させて弾き飛ばされるケースが多いものの、電解作用による組織損傷や高電圧時のアーク放電(火花)による重篤な火傷を引き起こすリスクがあり、いずれも高圧下では命に関わる危険を持っています。
2点目は「長距離送電は今でも交流が絶対に優れている」という思い込みです。実は、パワー半導体技術が飛躍した現代、高圧直流送電(HVDC:High Voltage Direct Current)の導入が世界各地で進んでいます。
交流送電には、海底ケーブルなどの長距離送電時に静電容量によって電力が失われる「リアクタンスロス」という弱点があります。一方の直流送電はリアクタンスロスがゼロであり、長距離になればなるほど交流よりも送電効率が上回ります。現在、洋上風力発電所から陸地への長距離海底送電や、大規模データセンターの内部給電において、交流から直流への一本化(高効率化)が進められています。