玄関で靴を脱ぐ。その些細なワンアクションが、現代人の脳に与えるリセット効果は想像以上に大きい。靴底にこびりついた外の緊張感を玄関に置き去りにし、解放された足先が畳のい草や温もりのある木肌に触れる。それだけで、無意識に身構えていた防衛本能が解除される。
都内のIT企業で働く30代の男性はこう語る。「毎日モニターを見つめてチャットの通知に怯えていると、昼休みくらいは完全にオフになりたい。座敷のある定食屋に入ってあぐらをかいた瞬間、ようやく自分の呼吸が深くなるのを感じます」。スピード至上主義の反動として、身体感覚を取り戻すための時間が選ばれている。