そもそも二人は、日本のエンターテインメント界において異なる頂に君臨してきた巨人同士だ。
市村正親は、劇団四季の伝説的な時代を経て、日本におけるミュージカル演劇の絶対的支柱となった。『ミス・サイゴン』のエンジニア役をはじめ、彼が演じたキャラクターの多くは後進の役者たちの生きた教科書となっている。圧倒的な発声、ステージを一瞬で掌握する支配力は今なお衰えを知らない。
対する篠原涼子は、日本のテレビドラマ界において確固たるポジションを築き上げてきた。『アンフェア』で見せたストイックな刑事像、『ハケンの品格』での痛快無比なスーパー派遣社員など、時代のアイコンとなる名作を連発。さらに近年では、Netflixで世界配信された『金魚妻』でのセンシティブかつ体当たりの演技が世界中で話題を呼んだ。
演劇の生々しさを愛する父と、カメラの前で繊細なリアリズムを放つ母。この二人が家庭の中で交差していたこと自体が、子どもたちにとっても、日本芸能界にとっても類稀な財産だったといえる。