通常、日本のアマチュアトップ選手がプロに転向する場合、日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストを受け、国内の有力ジムから大々的にデビューするのが王道とされる。しかし、保坂剛が選んだ道はまったく異なるものだった。
2018年後半、保坂はフィリピンの地にいた。アウェイの洗礼が待ち受ける極限の環境で、自身の拳ひとつでキャリアを切り拓く覚悟を決めたのだ。
フィリピンのリングは、国内の整った環境とは正反対と言っていい。野性味あふれる打撃を持つ現地ファイター、独特の熱気に包まれた会場、完全なアウェイ判定のリスク。その過酷な泥臭い環境に身を投じたことで、保坂は純粋な技術だけでなく、どんな局面でも動じない強靭な精神力(メンタリティ)を手に入れた。
現地での初陣となったヘリー・キノン戦でのKO勝利をはじめ、ジェイソン・ティナマイやロムニック・マゴスといったタフな相手との対戦を重ねた。フィリピンでの経験は、後に日本リングへ戻った際の大きなアドバンテージとなって生きることになる。