今でこそ歓迎モードが定着している白川郷だが、最初からスムーズだったわけではない。むしろ始まりは、深い困惑と戸惑いに包まれていた。
『ひぐらしのなく頃に』は、村の凄惨な連続怪死事件や「雛見沢症候群」という架空の風土病を描いたダークミステリーだ。静かで格式高い世界遺産を目指す地域住民にとって、「自分たちの村が殺人事件の舞台として描かれている」という事実は、当初かなりのショックを与えた。「風評被害につながるのではないか」と懸念する声が上がったのも当然の帰結だったと言える。
状況を変えたのは、現地を訪れるファン自身の振る舞いだった。彼らは村の歴史や生活を乱すことなく、むしろ敬意を持って静かに散策を楽しんだ。ゴミ拾いを自主的に行うファンの姿や、地元の食堂・民宿に長く滞在して地元の人々と対話を重ねる姿勢が、住民の心を少しずつ溶かしていったのだ。