東京ドーム約3.5個分(約17万平方メートル)という広大な敷地を誇る博物館網走監獄には、移築された建造物のうち8棟が国の重要文化財、6棟が登録有形文化財に指定されています。その中でも絶対に外せない圧倒的な見どころを紹介します。
施設の象徴であり、最大のハイライトとなるのが「旧網走監獄 舎房及び中央見張所(通称:五翼放射状平屋舎房)」です。1912(明治45)年から1984(昭和59)年まで実際に使われていたこの木造舎房は、中央の八角形見張所を中心に、5本の長い廊下が放射状(扇状)に広がる独特の構造をしています。看守が中央に立つだけで、すべての廊下の見通しを一瞬で監視できる機能美を極めた設計であり、木造の行刑建築としては世界最古かつ世界最大規模を誇ります。
斜め格子になった頑丈な木製の扉や、天窓から差し込む一筋の光、廊下の冷え冷えとした空気感は、当時の受刑者たちが置かれていた極限の孤独を肌で感じさせます。
そして、この舎房(第四舎)を訪れた見学者の目を釘付けにするのが、「昭和の脱獄王」と呼ばれた白鳥由栄(しらとり よしえ)のリアルな蝋人形展示です。白鳥は、生涯で青森刑務所、秋田刑務所、網走刑務所、札幌刑務所の計4回にわたり脱獄を成功させた実在の人物です。
極寒の網走刑務所に収容された白鳥は、1日1杯配給される味噌汁の塩分を使って手錠と視察孔のボルトを数カ月かけて少しずつ腐食させ、1944(昭和19)年の真冬、関節を自在に脱臼させる特異体質を活かして幅わずか数十センチの視察孔をすり抜けました。舎房の梁の上に身軽に這い上がり、脱出を図る白鳥の姿を再現した蝋人形は迫力満点で、館内屈指のフォトスポットとなっています。
このほかにも、全国の刑務所建築の模範とされた「旧網走刑務所 二見ヶ岡刑務支所(重要文化財)」や、受刑者が精神の安定や更生を求めて説教を聞いた和洋折衷の美しい建築「教誨堂(きょうかいどう・重要文化財)」など、当時の建築技術の粋を集めた遺構が立ち並びます。