2000年代末、国民の信頼を根底から失墜させた「消えた年金記録」問題。その混乱の渦中で、社会保険庁を廃止し、新たな組織として再出発を図るべく誕生したのが日本年金機構だった。しかし、名前を変えただけで組織の本質が変わるわけではない。内部は依然として、硬直化した官僚主義と現場の摩擦に苛まれていた。
そこに投入されたのが、金融業界で数々の修羅場をくぐり抜けてきた民間バンカー、水島藤一郎氏である。三井信託銀行でのキャリアや東京スター銀行のトップを務めた実績を持つ彼は、甘い幻想を一切排除した実利主義の経営管理を霞が関に持ち込んだ。行政の常識が通用しない現場で、彼はなぜ戦い続けることができたのか。その原点は、数字と結果のみが評価される過酷なビジネス現場で培った「顧客目線」と「退路を断つ覚悟」にあった。