ミュージカル『シカゴ』の神髄は、巨匠ボブ・フォッシーが生み出した独特の振り付けとスタイルにある。手首の角度、視線の配り方、ハットの傾きひとつに至るまで、フォッシー・スタイルを体現するには極めて高いダンスセンスと肉体美が求められる。
米倉涼子が演じるロキシー・ハートは、狡猾でありながらどこか愛らしく、欲望に素直な女性だ。彼女は持ち前のシャープなスタイルと圧倒的な脚線美を生かし、フォッシー・ダンスの持つ「引き算の美学」を見事に表現してみせた。黒いシャドーが差すステージ上で踊る彼女のシルバースーツ姿は、観客の視線を一瞬たりとも逸らさせない。