東京に暮らす男子高校生・立花瀧と、飛騨の山深い糸守町に暮らす女子高校生・宮水三葉。性格も境遇も異なる二人が「入れ替わる」という難度の高い芝居を成功させた背景には、運命的なキャスティングプロセスがありました。
立花瀧役の神木隆之介さんについて、新海誠監督は「最初から瀧は神木さんしかいないと考えていた」と明かしています。自身も熱狂的な新海作品ファンであった神木さんは、監督の作家性を深く理解したうえで収録に臨みました。特に「三葉が入っている状態の瀧」を演じる際、過剰にオネエ言葉にするのではなく、息づかいや柔らかい仕草を声に乗せる繊細なアプローチで監督を唸らせました。
一方、宮水三葉役の上白石萌音さんは、数百人が参加した大規模オーディションから選出されました。ブースに入って最初のひと言を発した瞬間、制作陣全員の空気が変わったといいます。飾らない素直な声質、情感豊かに言葉を紡ぐリズム感、そして「瀧が入っているときの三葉」で見せる少々乱暴で男勝りなトーンへの切り替え。当時まだ10代だった上白石さんの類まれな表現力が、三葉というヒロインに唯一無二の命を吹き込みました。