この曲の難しさは、極端な音域の広さだけにあるのではない。真の難関は、囁くような弱音から胸を引き裂くようなフォルテシモまで、ダイナミクス(音量の強弱)をコントロールし続ける集中力にある。Aメロでは低音域のチェストボイスで言葉をぽつりぽつりと落とすように歌い、Bメロで感情を徐々に高ぶらせ、サビで一気に感情を解放する構成だ。
さらに、吉田美和特有の「言葉のタメ」や「引き戻すようなビブラート」が随所に散りばめられている。リズムに機械的に合わせるだけでは、楽曲が本来持っているグルーヴや切実さが抜け落ちてしまう。音程の正確さを保ちながら、フレーズごとの息の量や響きのポイントを繊細に切り替えていく作業こそが、歌唱難易度を跳ね上げている最大の要因だ。