啄木の借金被害者の中で、最も深く傷つき、同時に最も彼を支援し続けたのが、同郷の言語学者・金田一京助です。盛岡尋常中学校の先輩であった金田一は、啄木の類まれな詩才を誰よりも高く評価し、生涯にわたって無償の愛を注ぎました。
金田一は啄木が上京して困窮するたびに金を工面しました。自身も決して裕福ではなかった金田一は、自身の着物や家財道具、さらには妻の着物や帯、命より大切にしていたアイヌ語研究の貴重な洋書や辞書まで質屋に入れて現金を作り、啄木に手渡しました。
ところが啄木は、金田一が工面してくれた金を受け取ると、「下宿代を払う」と言いながらそのまま浅草へ直行し、芸者遊びで一晩のうちに使い果たしてしまいます。金田一に無断で借金を重ね、返済を迫られても悪びれる様子を見せない啄木の身勝手さに、金田一は時に涙を流しながらも、ついに最後まで啄木を見捨てることはありませんでした。