瀬尾作品の映像化において、ひときわ高い評価を獲得したのが映画『夜明けのすべて』だ。気鋭の映画監督・三宅唱がメガホンを取り、日本映画界を牽引する松村北斗と上白石萌音がダブル主演を務めた。パニック障害を抱える山添と、重い月経前症候群(PMS)に苦しむ藤沢。ふたりが働く小さなプラネタリウム器具の製造会社を舞台に、物語は静かに展開する。
特筆すべきは、ふたりの関係性を安易な恋愛関係へと回収しなかった点にある。恋人でもなく、単なる同僚とも違う。ただ互いのしんどさを知っているからこそ、必要なときにそっと手を差し伸べ合える「特別な同志」。松村北斗が演じる山添の繊細な表情の変化と、上白石萌音が放つ飾らない人間味が、原作の持つ静謐な救済のトーンと見事に共鳴した。暗闇の中で夜明けを待つすべての人へ寄り添う本作は、国内外の映画祭でも絶賛を浴びた。