当時の惨状を生々しく記録していたのが、西洋医学の祖と称される伝説的な医師ガレノスだ。彼は患者たちを自ら診察し、発熱、黒ずんだ下痢、喉の発疹、そして皮膚全体に広がる乾燥した潰瘍といった症状を克明に書き残した。
ガレノスの詳細な臨床ノートは、現代の疫学的な分析においても第一級の史料として評価されている。彼の記述からは、医療体制が完全に崩壊し、権力者から庶民に至るまで誰もが死の恐怖に直面していた生々しい現実が浮かび上がる。感染速度の速さと臨床症状の凄惨さは、当時のローマ市民に深いトラウマを刻み込んだ。